夜間飛行

bearhand

2010年06月01日 23:38



機体は、満月の光に照らされながら静かに北上を続けている
仕事あがりでへとへとになった身体を横たえながら
窓からひたすら暗い空を眺めていた

ひさしぶりの旅
思いうかぶ懐かしい顔顔顔
思い出のあの場所

あれからどれだけの時が過ぎたんだろう

あるひとは旅立ち
あるひとは生涯の伴侶を得
あるひとは道を模索し
あるひとには新しい命が生まれた
あるひとは悲しみにくれ
でもあのひとの笑顔はそのまま

私は?
私はどれくらい変われだのだろうか
過ぎた時間にどれだけ向き合えるのか
自分が問われているようで
飛び立つ前は
少し躊躇していた

私達が別れたきっかけ
あの娘が命を絶った理由
彼女の病の意味

答えを見つけなければと思っていた


でも飛行機を降り立ち
たくさんの笑顔に会ったら
そんな悩みはどこかにすっとんで

ただただ
こんなにたくさんのひとたちに
支えられて私は生かされていたのだと

馬鹿ばっかりやってたけど
とてつもなく楽しい時間と仲間たちがいたこと
素晴らしい出会いがたくさんあったこと
誇りに思える友がいること

2人のあの時間は確かにあったのだということ
あの娘が誰よりも愛されていたこと
彼女が今必死に生き抜こうとしていること

それぞれが新しい道に踏み出して
そして新しい命が生まれたこと

ただただ
全てがつながりあって支えあって
今の私がいること

そのことだけが胸に迫ってきて
涙が流れてとまらなかった


泣いて泣いて
曇り空も雨も全て
洗い流したあとには
またぽっかりと
青い空が
「おかえり」と
手をひろげていた



「ただいま」

今かえってきたよ